結論
先に結論から書きます。
夏タイヤは冬に減りやすいという事実はない
乾燥路面において夏タイヤがスタッドレスにグリップで負けることは考えにくい
事の発端は以下の記事を読んだことだった。
くるくらはJAFMATEを発行する、JAFメディアワークスというJAFの関連会社が運営するサイトである。従って、一個人が運営するサイトよりは信頼はできると言えるだろう。
この記事では、「夏タイヤは冬に減りやすいという事実がある」、「ドライ路面でも気温が7℃を下回ると冬タイヤのグリップが優位になる」と書かれている。
この記事中で想定しているタイヤは、冬タイヤと言ってもスタッドレスでなくヨーロッパなどで売られているウィンタータイヤなのでさらに話がややこしい。
冬タイヤの種類
オールシーズンタイヤ
これは冬タイヤなのかという疑問もありますが、高速道路の冬用タイヤ規制を通れたり、メーカーも圧雪路は通れるとしているので、一応冬タイヤの仲間にいれておきます。
どのメーカーも注意書きで過酷な積雪路や凍結路を日常的に通行するならスタッドレスを推奨するとあります。
スタッドレスタイヤ
これはおなじみのタイヤです。日本の冬タイヤといえばほぼこれしかないです。
ブリヂストンのブリザックとかが有名ですよね。特に国産はアイスバーンに強いと言われてます。
アイスバーンは氷の上なので通ると、摩擦で氷がとけてそこで生じた水の膜で滑ります。これに対する性能がスタッドレスで優れています。
もともとスタッドがあり、法律で規制された後にレスになったのでスパイクタイヤに近い性能があるというわけです。その反面、乾燥路面では摩耗が早かったり、ロードノイズがうるさかったりします。
ウィンタータイヤ
冬タイヤの英語やんけと思われますが、スタッドレスと区別して便宜上呼んでいるだけです。
ヨーロッパや北米など氷上性能よりも、乾燥路面を重視している市場に向けて作ってあります。
逆に、日本メーカーは日本向けに売っておらず、ミシュランなどの一部のメーカーものしか選択できないです。なので日本では装着している人はほぼいないと思われます。
スタッドレスと比較すると、氷上性能はなく、雪道などの冬の道は走れて、オンロード性能がサマータイヤに近いといった感じです。オールシーズンよりも冬に強いといえばいいでしょうか。
ブリヂストンに問い合わせ
記事の内容ってほんまか?とブリヂストンに問い合わせたところ回答してもらったので、とりあえず全文載せます。
株式会社ブリヂストンホームページにメッセージをいただきまして、
ありがとうございます。
お客様相談室のOOと申します。
平素は、格別のご高配を賜り厚く御礼申し上げます。
お問合せの件に関しまして、下記の通りご回答いたします。
ドライ路面の場合、気温が低下しても夏タイヤがスタッドレスタイヤにグリップで
劣るような状況は考えにくいと考えます。
弊社としても、いただいたリンク先の記事の存在は以前から承知しておりました。
ただその記事の試験は、スタッドレスタイヤを用いたものではなく、より夏タイヤに近い
位置づけの欧州の冬タイヤでの比較結果だったようですので、国内のスタッドレス
タイヤとは違う特性と考えます。
夏タイヤが低温時に大きく摩耗するというような情報もございません。
タイヤに使われているゴムは、そのタイヤの狙いの商品性能に合わせて
様々に開発されておりますので、夏タイヤ・冬タイヤの括りだけでは
低温時の性能を明言することはできないと考えます。
低温でのグリップ性能と摩耗性能の関係もまた、必ずしも背反するとは限りません。
一日中気温が低いまま一定なら別ですが、通常は一日の中で気温の変化がありますから、
そういった点でも冬に夏タイヤの摩耗が進む、といった断言は難しいのではと
考えます。
なお、気温が低下していくと、当然ですが凍結した路面や降雪に遭遇する確率が
高くなりますので、そのような路面も含めた上で夏タイヤのグリップがスタッドレス
タイヤより劣る、というのであれば、理解いたします。
摩耗も、冬タイヤは雪上を走るので摩耗が進まず、一方で夏タイヤは雪上で使われず
低温ながら舗装路で走行するので摩耗が早い、という走行条件違いも含めた話であれば、
摩耗量の違いも理解いたしますが、おそらくそういう話ではないのではと思います。ブリヂストンから回答
いずれにしても、気温が低い時期には、ドライ路面だけでなく、様々な路面状況に
なる可能性を考慮して、早めのスタッドレスタイヤへの交換をご推奨いたします。
ご期待された回答になっているか分かりかねますが、以上、よろしくお願いいたします。
解釈
まず、夏タイヤは冬に減りやすいという説についてはそんな事実はない。つまりデマと言っても差し支えないと思います。このことについては、ブリヂストンさんの文言をみても間違いないです。
次にグリップについてですが、乾燥路面については、スタッドレスよりも夏タイヤのほうが優位であると書かれています。それ以外の冬の路面、雪上、氷上だったら当たり前ですがスタッドレスが優位です。
日本でほぼ流通していないウィンタータイヤとの比較は正直書かれていないので、わかりません。ただ、ウィンタータイヤよりさらに柔らかいゴムのスタッドレスよりもサマータイヤのグリップが優れいることや、ウィンタータイヤは雪上性能はある以上そのようなブロックパターンになっていること、
極めつけは、ミシュランのウィンタータイヤのページみるとわかりますが、路面適合に関しての表があり、乾燥路面ならサマータイヤのほうが適合が高いことになっています。
MICHELIN ALPIN 5(アルペン ファイヴ) | 日本ミシュランタイヤ
なので、「雪が降らなくても、低温時にグリップ落ちるからスタッドレスに履き替えた方がいい」という理論は間違いですね。
乾燥路面のグリップはスタッドレス<ウィンタータイヤ<サマータイヤなので。
ドイツの法律について
さて夏タイヤは低温でグリップが云々の記事には、ほぼ必ず7℃とドイツの法律というキーワードがでてきます。
7℃については、夏タイヤと冬タイヤでグリップ力が逆転すると言われているとだけ、たいていの記事に書いてあり、一次ソースがどこも示されていないので、昔からの言い伝えみたいな感じになってます。なのでこの情報も怪しいです。
そして、ドイツでは「冬になったら冬タイヤに変えなければならない」という法律があると、いろいろなサイトに書かれており、これを冬になったらタイヤを変えるべきだという根拠に使っている人もいます。
このことについて詳しい記事がありました。
以下引用ですが
「路面凍結時、積雪による滑りやすい道路状況、降雪時、その他の凍り滑りやすい状況では、相応の条件を備えたタイヤを装着すべし。」
という法律みたいで、どうみても冬に必ず変える義務じゃないことがわかります。
こんなん日本でも当たり前ですね。雪つもってたり路面凍結してるのに夏タイヤで走行しちゃだめですよ。要するに、日本でいうと急に雪が降ったり、路面凍っているのノーマルタイヤで運転してスリップする輩たちを抑制する法律です。
これがメーカーの宣伝で過剰に拡大解釈して使われた結果、日本のメディアもよく確認しないままそのまま流すという情けない感じがしますが、まあ世の中そんなもんか。
まとめ
長くなりましたが、最初の結論に戻ります
夏タイヤは冬に減りやすいという事実はない
乾燥路面において夏タイヤがスタッドレスにグリップで負けることは考えにくい
従って、寒くなったと言っても雪も降らないし、路面が凍ることのない地域に住んでいる人はわざわざ冬タイヤに変える必要はないです。
逆に言えば年に数回でもそのような状況で走行するなら冬タイヤに変えることを推奨します。
今思うと、そもそもタイヤメーカーが日本ではそんな宣伝文句使わない以上間違っていると判断してもよい気がしてきました。実際、夏タイヤのグリップが落ちて危ないならメーカー各社は毎年大々的に宣伝しますからね。
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